コラム

【相続】実印と認印の違い

2024年09月02日

相続・高齢者支援専門行政書士の上岡です。

今日は、印鑑の話をしてみようと思います。脱ハンコ時代なのに、なぜいまだに相続手続には印鑑が使われるんだろうという素朴な質問は時々受けます。なぜ脱ハンコが叫ばれるようになったかといえば諸説ありますが、認印が簡単に手に入るようになって意思表明のための押印が偽造しやすくなったことや、デジタル時代の業務効率化にそぐわない、というポイントがありそうです。

一般的に、印鑑証明に押されたハンコのことを『実印』と呼び、それ以外のハンコのことを『認印』と呼びます。岡山市 のホームページを見ると『印鑑登録証明書(印鑑証明)は、金銭の借り入れや不動産の登記など、社会生活上で重要な手続に用いられる印鑑を公に証明するものです。』とあります。では、結局この印鑑証明とはいったい何なのかといえば、平たく言えば『これは私の所有するハンコであり、私が推したことに間違いがありませんよ』というものです。上記も含め、相続といった特に重要な権利義務を明確にする書面には実印を求められるケースが多いようです。金融機関に相続手続を行う際、相続人は「遺産分割協議書」(もしくは金融機関発行の相続手続書類)に実印を押印の上、印鑑証明書添付が求められます。この流れはおそらく当面変わらないと考えます。実印を誰かに貸すなんてことは絶対にしちゃダメです。トラブルの元ですよ。

相続人の中には、相続を機にはじめて印鑑を登録するという人が時折おられます。例えば今までにご自身の名義で不動産や自動車を購入したことがない場合などではこういったことはありえますので、慌てる必要はありません。また、実印を紛失した等のご相談もありますが、この場合でも、再登録手続はできますので、どうぞ市町村の窓口または当職にご相談ください。ご本人が窓口に行けない場合でも対応してくれる自治体もあります。

参考まで、遺言を作成する場合にも必ず印は求められます(民法第968条1項、同969条1項4号他)。印のない遺言書はそもそも無効ですが、ここでは認印でもかまわないことになっています。

ういえば過日、『印鑑』はハンコのことを指すのに、『選手名鑑』とか『動物図鑑』とかは本(に記載されたリスト)を指すのはなぜだろうとふと思ったら、wikipediaに答えが書いてありました。その昔は、印影とハンコの所有者を一致させるためにハンコを登録する制度があり(これが今の印鑑登録制度につながっていると思われます)、そのハンコを登録した登録簿を『印鑑』と呼んでいたようです。それがいつの間にか印鑑のことがハンコそのものを指すようになったようです。

下にあるハンコは認印です。なんて書いてあるかわかりますか?