相続・高齢者支援専門行政書士のかみおかです。今回は、意外と理由の知られていない『相続の時、なぜ預貯金口座は凍結されるのか?』を解説します。
銀行や信用金庫等金融機関は、口座名義人の死亡(相続の開始)を知ると、その口座の入出金は一切できなくなります。一般的には『口座凍結』と表現するケースが多いようです。これは、民法等法律の要請によって入出金を停止せよ、という規定があるわけではありません。では、どのような根拠からこのような取扱いになるか、ですが、
(共同相続の効力)民法第898条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
とあり、死亡と同時に預金は【相続人全員の共有財産】となります。金融機関の思惑としては「相続人の一人に全額を払い渡して、他の相続人から文句を言われるのを避けたい」のです。別途、民法909条の2、に遺産の分割前における預貯金債権の行使という条文がありますので、預貯金の一部の引き出しは可能になりました。
金融機関が知りたいのはおおよそ➀死亡の事実➁相続人は何人いるか③遺言書はあるか➃相続人全員がその口座の出金および相続人一人への払渡しについて了知しているか、です。
公正証書遺言が存していたり、遺産分割協議書が整えば、相続人の一人に対して払渡しができます。実務的には金融機関が発行する【相続手続依頼書】に相続人全員の署名と実印押印、印鑑証明書とともに相続人を証明する一連の戸籍を提出して手続を進めるケースが多いです。この書面が出てくるということは、金融機関にとって『相続人全員が被相続人口座の出金を了知している』とみなせるのです。
よくある話、口座凍結が面倒だからと死亡日前後から毎日ATMに行って、少しずつ預貯金を引き出すというのはオススメしません。なぜかというと、預貯金は経過日数に応じて『利息』が発生するからです。きちんと解約手続をした方がよいです。
また口座凍結によって公共料金等の口座振替(引き落とし)もできなくなります。引き落としができなくなった業者は、コンビニ等で支払のできる振込用紙を送ってきます。これは無視してはいけません。きちんとお納めになっていただき、名義変更とともに新たな振替口座の指定をお願いします。被相続人の通帳をきちんと確認し、各債権者に対して通知することが肝要です。
相続において、銀行や信用金庫といった金融機関の手続が不要になるケースは、まずありません。ご不明な点は、当職までお問い合わせください。当職は生命保険会社にいましたので、金融機関の思惑も含めてよく承知しています。
(投稿者・行政書士 上岡 融)