コラム

【相続】生命保険なのに、受け取れない!?

2025年06月13日

相続・高齢者支援専門行政書士のかみおかです。今日は少々刺激的なテーマです。『生命保険なのに、保険金が受け取れない』。たとえば母親が他界して、母親の書類を整理していたら生命保険の証書が見つかった。そんな保険に加入していたのも知らなかったから、保険会社に電話したら、コールセンターの順番待ちでなかなかつながらず、やっとつながったと思ったら『これは〇〇ですね』と言われてしまう。

これは実務の世界ではよくあります。そこで、なぜこのようなことが起きうるのか、紐解いていこうと思いますのでおつきあいください。

当職が知りうる限り、原因としては3つ考えられます。

➀、満期。保険の内容が満期を迎えたら満期金が支払われるタイプの契約で、手続は終わっているのに証書だけがお手元に残っているパターン。実際、保険会社から届く書類、どれが大事なものでどれがどうでもいいものかよくわからず、全部保管してあるのはよくある話です。
(➀派生)解約済み。保険会社から届く書類の8割はどうでもいいものだったってのは経験です。

➁失効。これはごくまれです。契約の途中で掛金が支払えず、貸付を受けたりして保険の効力を失っているパターン。内容によっては満額から差し引かれて(自動振替貸付)、支払われる場合もあります。

➂被保険者が違う。これがもっとも厄介なパターンですが、実務ではときどきあります。ここを解説します。

生命保険は、大きく分けると契約上3人の登場人物が発生します(という話は以前にもしました)。

・契約者(保険料/掛金を保険会社に納める人、解約権を持つ人)
・被保険者(その掛金を元に保障の対象になる人)
・死亡保険金受取人(『被保険者』死亡時の受取権を持つ人)

一般的には契約者と被保険者が同一で、死亡保険金の受取人が相続人というパターンで、死亡保険金は【受取人固有の財産】と最高裁判所の判例が出ています。しかしながら死亡保険金が発生するのは被保険者の死亡時に限られますので、たとえば

・契約者・母
・被保険者・長女
・死亡保険金受取人・母

になっている契約で、母が死亡した場合には、契約者・受取人の死亡であって、そもそも死亡保険金の支払い理由にならないのです。

このような場合、これは預貯金や不動産と同じ【相続財産】とみなされ、相続人が複数存する場合には遺産分割協議書(もしくは保険会社の指定する用紙)に、相続人全員の署名実印と印鑑証明書を添付して『契約者変更』を行うことになります。少々手間が多いです。そうして新たな契約者の元に新たな保険証券が発行され、新たな契約者の意思で解約(現金化)することは可能です。

なぜこのパターンが存在するかというと、相続対策よりも、いわゆる『財テク、貯蓄』の延長として加入したところが大きく、ここから先の話は少々保険の営業現場を知る者の話、その場に遭遇したときには相続人さんにお伝えします。ここで書くのは控えます。

派生として

・契約者・妻
・被保険者・夫
・死亡保険金受取人・妻

となっていて、夫が死亡した場合もありえます。この場合は税務上の取扱いが一般的な加入の場合と異なりますのでご注意ください。

そういえば、保険契約約款上、自殺免責期間(一般的には加入後2~3年間)に該当していれば保険金支払にならない、というパターンもありますが当職が在職中は一度も経験はしませんでした。

生命保険が絡む複雑な相続は当職までご相談ください。

(投稿者・行政書士 上岡 融)
なお当事務所は生命保険販売をおこなっておりません

次回以降のコラムでは
・死亡保険金受取人が既に死亡していた
・死亡保険金受取人が離婚した元嫁のままになっていた
このあたりも機会があれば書いてみようかなと思っています。